判例で学ぶ!瑕疵担保責任


事務所兼賃貸マンション建築用の土地の売買契約において、近隣に存在する暴力団事務所は隠れた暇庇に
該当するとして、売主の損害賠償責任が認められた事例 (東京地判平成7.8.29 判時1560-107)

事案の概要

買主業者は、事務所兼賃貸マンションを建設する目的で、売主業者から土地を買い受けた。しかし、本件土地が面する交差点の対角線上の建物には、指定暴力団の事務所があった。本件売買契約締結に至るまで、本件暴力団事務所についての説明等はなかったため、紛争となった。買主業者は、本件土地には、隠れた瑕疵があるとして、契約解除、損害賠償を求めるとともに、売買契約の詐欺取消、錯誤無効等の主張も行った。
これに対し裁判所は、詐欺取消、錯誤無効等の主張は認めなかったものの、売主の瑕疵担保責任は認めた。ただし、契約解除は認めず、売主の損害賠償責任のみを認めた。


売主の暇庇担保責任についての判断骨子
(1)瑕疵かどうか
※小規模店舗、事務所、低層共同住宅が点在する地域に所在する本件土地の交差点を隔てた対角線の位置に本件暴力団事務所が存在することが、本件土地の宅地としての用途に支障を来し、その価値を減ずるであろうことは、社会通念に照らし容易に推測されるところ、当裁判所の鑑定における鑑定意見は、減価割合が20パーセントから25パーセントであるというものであり、本件暴力団事務所の存在そのものが本件土地の価値を相当減じていることは明らかである。※そのため、本件暴力団事務所と交差点を隔てた対角線の位置に所在する本件土地は、宅地として、通常保有すべき品質・性能を欠いているものといわざるを得ず、本件暴力団事務所の存在は、本件土地の瑕疵にあたるというべきである。

(2)「隠れた」瑕疵かどうか
※本件売買契約締結時には、何ら暴力団事務所としての存在を示すような代紋等の印は掲げられておらず、暴力団事務所であることを示すような外観を何ら呈しておらず、通常の人が本件土地の買主となった場合には、本件土地の現場を検分しても事務所の存在を容易に知覚し得なかったものというべきである。本件暴力団事務所の存在は、本件土地の隠れた瑕疵に該当する。

(3)瑕疵の程度
※本件契約の後に、本件暴力団事務所のある建物の東側の土地上には、店舗共同住宅が新築されていること等の事実に照らせば、本件暴力団事務所が存在するために本件土地に事務所兼賃貸マンションを建築することができないとして本件契約の目的を達成することができないという原告の主張は採用できない。

判例のポイント

●判例は、暴力団の組員が存在することそのものを暇痕といっているのではなく、組員の具体的行動が住み心地の良さを欠く状態になっているため、瑕疵であるとの認定を行っている。