建物全体にわたる雨漏り等は、買主がクラックの存在を知っていたとしても、構造の欠陥に基づくものであって隠れた瑕疵に該当すると判断された事例 (東京高判平成6・5・25 判時1458-87)
土地及び建物の売買契約を締結して引渡しを受けた買主が、建物全体にわたる雨漏りや浄化槽からの汚水漏れ等を発見したため紛争となった。買主は、売主が民法第570条の瑕疵保責任を負うと主張し、売主に対し、売買契約の解除に基づく原状回復として売買代金相当額の返還を求めた。これに対し裁判所は、第一審も控訴審も、本件建物には隠れた猥庇があると判断した。
1)瑕疵かどうか
※本件建物には、建物全体にわたる雨漏りと、水道管の破裂、出水事故の危険性及び浄化槽からの汚水漏れという重大な暇庇がある。
(2)「隠れた」瑕疵かどうか
※本件建物には、本件売買契約以前から相当数のクラックが存在し、各室内における雨漏り被害もかなりの程度に達していたと推認されるうえ、雨漏りの存在は、天井、壁のしみ等により、外見上ある程度明らかになる事柄ではあるが、一般的にみて、クラックの存在が直ちに雨漏り、殊に建物全体にわたる大規模な雨漏りと結びつくものではない。
※本件建物が建築後2年7カ月の鉄骨造り共同住宅であったことからすれば、このような
建物を買い受けるにあたり、買主において、このような大規模な雨漏りが存在する可能性を予期し、建物全室の状況を調査、確認すべきであるとはいえない。
※したがって、本件建物に前記のような雨漏りが存在することは、通常容易に発見できない性質のものというべきであって、この雨漏りは隠れた瑕疵ということを妨げない。
※建物の外壁にクラックが存在するからといって、それが直ちに雨漏り、殊に建物全体にわたる大規模な雨漏りと結び付くものではなく、またこのような雨漏りの範囲、程度、原因等を把握するには、ある程度専門的な調査が必要とされるところ、一般的な居住用の買主にそこまでの調査義務はないと解されることなどからすれば、買主が本件建物の雨漏りの瑕疵を知らなかったことにつき過失があるとはいえない。
●本件では、クラックの存在や雨漏りについては買主も気付いていた、もしくは気付くべきであった事案であるが、裁判所は、そのような事情の下でも、建物全体にわたる雨漏り等は建物の構造の欠陥に起因するものであって、この構造の欠陥は「隠れた瑕疵」であると判断した。中古住宅の売買等では参考となる判例である。